AIR.



怠惰に過ぎた

甘い暑さと

夏の終わりの夕暮れに

 

単気筒の振動と

湾岸の冷たい風に

しなやかに交差した腕


 

 

二つの影は

街の雲の隙間に

残像を落としながら

温もりの欠片を求め

見つけたそれを手にとった。

 

 

明るく透明な珈琲は

温もりと、沈黙とを伴って

深く、深く染み入った。

 

僅かな静寂が過ぎ

淡い影たちは

その液体について

 

絶え間なく、重なる刻に

絶え間なく、声を重ねた。

 

透明について

その価値について

知らないことを、知らずに

 

雑音の届かないその場所で

世界は重なって

ひとつだと、信じて。

 

 

煙草の白の、その先に

同じ空と

同じ月が、浮いていた。

 

 

温もりを取り戻し

交差した腕は

透明で不明瞭な

淡い夜へと

消えていった。

 

 


夏の終わりの残像は

時の歪みに

薄れてしまう事なく

明らかで半透明な

今を流れている。

 

 

ゆらぎの旋律が

等しく全てを奪うまで、

 

たったひとつの

この空と共に。



 

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