WORD.
白く、凍える夜に見た、同じ月
頬を伝う感情と
重なる吐息。
そこには少しの隙間も無いように思えたが
淡く薄い、膜が存在していた。
とても深い場所で種は芽吹き
声となり、境界を渡ろうとする。
異なる空間を漂うそれは、
確かで、不確かだった。
声は響き合おうと求めるけれど
曖昧な空と空との間の距離が
何もかもを、複雑にしてしまう。
時を忘れるほど語り合ったとしても
同じそれに触れたかどうかを
知る術はなかった。
ただ、ある種の感情は突風のように
全身を素早く巡り、声を掻き消し
質感を伴って、心に直接触れる。
例えば、紙に映る風景に、
音と詩の旋律に、色彩と映像の夢に、
或いは、絡み合う指先に。
心の枝から放たれた言の葉は
とても深い場所から流れる風に乗り
掌のなかに舞い落ちる。
確かな感触と、想いと共に。
それは、これまでもそうであったように
この先も変わらず、そうあり続けるだろう。
声にならない、想いを綴るために。