PROLOGUE
PROLOGUE:
EFFECT
半透明な夕暮れの街の、無機質な空気。
地面を覆う、街路樹から落ちた、淋しげな木の葉。
冷たい手から、冷たい手に渡った、小さな温もり。
そんな微かな記憶の欠片たちには、
今が含まれていた。
抽象的な液体に映り込んだ、明滅する灯り。
行き交うその一つ一つに、溶け込む記憶。
曖昧で無関係に見えたそれは、実際のところ、影響し合っていた。
今、眼に映るこの風景が在るのは、それらが紡がれてきたからだろう。
あのとき触れたそれは、最も価値のあるものだった。
記憶の外側に眼を遷すと、景色は淡く不確かな色彩に染まっている。
その空には、風に吹かれた木の葉のように、
沢山の蝶が、時を気にする事なく、
ひらり、ひらりと舞い続けている。